「想定以上に寒くて、暖房費がかさんで困っている」
「結露やカビが気になって、健康面にも不安がある」
そんなお悩みをお持ちではありませんか?
実は、断熱性能の低い住宅では室温が安定せず、快適さや省エネ性を大きく損なってしまうことがあります。近年、住宅の省エネ基準は年々厳格化され、Ua値や断熱等級の数値による性能可視化が当たり前になりつつあります。しかし、何を基準に「本当に効果的な断熱リフォーム」を選べばいいのか、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、天井や屋根、床下など部位別に最適な断熱材や施工方法を解説し、補助金や支援制度、信頼できる施工業者の選び方まで網羅的にご紹介します。
断熱リフォームとは
断熱リフォームの基本
断熱リフォームとは、住まいの内部と外部の温度差を調整し、室内環境を快適に保つために断熱材を使用して住宅性能を高める改修工事のことです。単なる模様替えや設備の交換と異なり、住宅の構造そのものに手を加えることで、外気の影響を最小限に抑え、冷暖房効率を飛躍的に向上させる効果があります。特に冬の寒さが厳しい地域や、夏場の暑さがこもりやすい都市部では、その効果が体感しやすくなります。
断熱リフォームが注目される背景には、エネルギーコストの上昇や脱炭素社会への移行といった、時代的な要請もあります。冷暖房にかかる電気代を抑えるだけでなく、二酸化炭素の排出量を削減するという社会的貢献も見逃せません。また、住宅の断熱性能を高めることは、室内の温度差によって引き起こされるヒートショックや熱中症といった健康リスクを低減するためにも極めて重要です。
断熱性能が高い住宅は、年間を通じて室内温度が安定し、エアコンやストーブの使用頻度を減らすことができます。その結果、月々の光熱費が確実に抑えられ、家計への負担軽減にもつながります。さらに、断熱性の高い住まいは空間にムラがなく、家中どこにいても快適な温度を感じられるため、生活の質そのものが向上します。
住宅を断熱するという行為は、目に見えない部分への投資であるため、決して派手ではありません。しかし、目立たないからこそ快適さに直結し、毎日の暮らしの中でその効果を着実に実感することができるのです。また、住宅の資産価値を維持・向上させるという意味でも、断熱性能の改善は非常に重要です。省エネ性の高い住宅は今後の不動産市場においても高く評価される傾向が強く、断熱リフォームは中長期的な視点でも理にかなった選択肢といえるでしょう。
断熱リフォームの目的と基本構造とは
断熱リフォームの根本的な目的は、住まいの断熱性能を高めることによって、夏の暑さや冬の寒さといった外気温の影響を最小限に抑え、室内の温熱環境を安定させることです。結果として、冷暖房効率が向上し、年間を通じた光熱費の削減に直結します。また、生活空間が一定の温度に保たれることで、ヒートショックや熱中症などの健康リスクを抑える効果も期待されています。
断熱の基本的な構造は、住宅の外皮と呼ばれる部分、つまり壁、屋根、床、窓などを中心に施工されます。これらは外気と直接接する箇所であり、熱の出入りが最も大きい部位です。これらの部位に断熱材を適切に設置することで、室内の温度変動を抑え、快適な住環境を保つことが可能になります。
たとえば、壁の断熱には、内側から断熱材を充填する方法と、外側に断熱層を加える方法があります。内断熱は施工が比較的容易で費用も抑えられますが、断熱効果は建物の構造に左右されやすく、気密性が求められます。外断熱は断熱性能が安定しやすく、建物全体を包み込む形になるため、熱の損失を最小限にできますが、費用が高めになる傾向があります。
また、床や天井の断熱も非常に重要です。床下からの冷気の侵入を防ぐことで冬場の底冷えを改善し、天井や屋根からの熱の流出を防ぐことで暖房効率が向上します。加えて、熱の出入りが最も激しい窓には、内窓の設置や断熱サッシへの交換、Low-E複層ガラスの採用などが推奨されます。これにより、窓周辺の冷気や結露が大幅に抑えられ、エネルギーロスも削減できます。
断熱材にはさまざまな種類があります。グラスウールは価格が手頃で施工性も良く、多くの住宅で利用されています。ロックウールは耐火性に優れ、屋根や壁の断熱に適しています。ウレタンフォームは気密性と断熱性が非常に高く、発泡タイプでは細かな隙間にも対応できる点が特徴です。さらに、フェノールフォームや真空断熱材といった高性能素材も登場しており、住宅の条件や予算、目的に応じて最適な選択が求められます。
断熱リフォームの最新動向(法制度、省エネ基準、断熱等級)
現在、断熱リフォームは省エネルギー政策と深く関係し、国の方針や法制度の影響を強く受ける分野となっています。特に住宅の省エネ性能を評価する基準として、「断熱等性能等級」の存在が大きくクローズアップされており、これが断熱リフォームの指針として活用されています。
断熱等性能等級とは、住宅の断熱性や気密性などを数値で評価するもので、等級が高いほど外気の影響を受けにくく、室内の温度環境が安定しているとされています。従来は等級5までが主流でしたが、制度改正により、さらに高い性能を求める等級6、等級7が新たに設定されました。これにより、高性能な断熱材の採用や、施工精度の向上がリフォーム業界全体に求められるようになっています。
国の政策としても、断熱リフォームを促進するための制度が次々と設けられています。たとえば、国土交通省や環境省が共同で実施する断熱リノベ支援制度では、一定の断熱基準を満たす改修に対して補助金が支給される仕組みがあります。この制度では、窓や外壁、床などを高性能な断熱材で改修する場合、上限200万円までの補助金が利用可能で、リフォームの費用負担を大幅に軽減することができます。
また、省エネ住宅に対する税制優遇も整備されており、断熱性能を強化した住宅は固定資産税の軽減や、住宅ローン控除などの対象となることもあります。これらの制度を活用することで、家計に優しく、環境にも配慮したリフォームが実現可能となっています。
加えて、各地方自治体も地域の特性に合わせた支援策を展開しています。例えば、北海道や東北地方など寒冷地では、室内の温熱環境を保つことが生活の質に直結するため、断熱リフォームに対する独自の助成金制度が充実しています。これらの制度は年度ごとに更新されることが多く、事前の情報収集と計画的な申請が重要です。
断熱リフォームの効果は本当にある?
効果なしと言われる原因とその回避策
断熱リフォームにおいて「思ったほど効果がなかった」という声は少なくありません。実際、施工後も室内の寒さや暑さが改善されなかったという報告は多く見られます。その主な原因は、リフォーム対象の選定ミス、施工技術の不足、断熱材の性能選定の誤り、そして生活習慣の変化を想定していなかった点にあります。
断熱リフォームの効果が現れにくい最大の理由は、断熱する箇所の選び方が適切でなかったことです。例えば、窓の断熱性能を高めることは一般的に効果的とされていますが、壁や天井、床など、外気と接する面全体を考慮しなければ、結局どこかから熱が出入りし、結果として効果が分散してしまうのです。部分的な施工だけでは、住宅全体の温熱環境を改善することは難しいと言えるでしょう。
使用する断熱材の種類や厚みが性能に合っていない場合も、断熱効果が薄れてしまいます。たとえば、価格を抑える目的で断熱性能の低い素材を選んでしまった場合、施工後の温度変化に対する期待値を下回る可能性があります。加えて、施工時の断熱材の取り付けに隙間があると、そこから冷気や熱気が侵入し、理論上の性能を発揮できません。断熱リフォームでは、職人の技術や現場の管理体制が非常に重要になるのです。
既存住宅の構造や築年数によっては、断熱リフォームだけでは効果が限定的な場合もあります。例えば、築40年以上の木造住宅で気密性が非常に低い場合、断熱材を加えても風通しの多さが温熱効果を打ち消してしまうことがあるのです。そうした住まいには、断熱と同時に気密性を高める工事やサッシの交換、玄関ドアの高性能化といった対策も必要になります。
もうひとつ見逃せないのが、生活者自身の期待値の設定です。断熱リフォームの効果は、体感温度や光熱費に徐々に現れてくるものであり、一夜にして大きく変化があるわけではありません。期待と実際のギャップが生じやすいのはこのためで、事前に専門業者と効果の目安について十分にすり合わせておくことが求められます。
断熱リフォームの失敗例とその対処法
断熱リフォームに関して後悔や不満の声を持つ人の中には、明確な失敗を経験したケースも多く見受けられます。代表的な失敗として、「寒さが改善されなかった」「夏の暑さに変化がない」「結露がひどくなった」などがあり、それぞれには共通する原因と、適切な対処法が存在します。
例えば、「寒さが改善されなかった」という声は、断熱材の選定や施工箇所の不適切さが原因であることがほとんどです。リビングだけ断熱を強化しても、廊下や玄関など他の部屋との温度差が大きければ、ドアを開けた瞬間に冷気が流れ込み、リフォームの効果を感じにくくなります。これを防ぐには、住空間全体の断熱計画を立て、連続性を持たせた施工を行うことが重要です。
「結露がひどくなった」という例では、断熱性を高めたことによって気密性も上がり、室内の湿気が外に逃げにくくなることが原因です。断熱リフォームによって結露が発生しやすくなるという逆説的な事例は少なくありませんが、これは適切な換気システムを併設しなかったために起こることが多いのです。断熱リフォームにあたっては、同時に換気対策や調湿機能のある建材の導入を検討することが、快適な室内環境を維持するうえでのポイントとなります。
加えて、「思ったより光熱費が下がらなかった」という失敗もあります。これは、居住者の生活スタイルが変化した場合によく見られるパターンです。たとえば断熱性が高くなって快適になったことにより、エアコンを長時間つけっぱなしにするようになった結果、逆に電気代が増えたというケースです。断熱の効果を正しく引き出すためには、省エネ意識と暮らし方をセットで見直す必要があるのです。
断熱リフォームの結果が実感できなかった理由のひとつに、施工前後の温度変化やエネルギー使用量の数値的な比較を行っていなかったことが挙げられます。数値としてのビフォーアフターを可視化することができていれば、「以前より体感温度が快適になった」「冷暖房の立ち上がりが早くなった」といった細かな変化も客観的に把握でき、満足度も向上するはずです。
断熱リフォームに満足したユーザーの共通点とは
断熱リフォームに対して高い満足度を示す人たちには、いくつかの明確な共通点が存在します。その要素を紐解いていくことで、これから断熱リフォームを検討する方が参考にすべき成功のポイントが浮かび上がってきます。
まず挙げられるのは、断熱性能だけでなく「気密性」と「換気性」のバランスにも意識を向けた点です。単に断熱材を入れるだけでなく、隙間風を防ぐための気密処理を徹底しつつ、結露を防ぐための計画換気を導入した住宅は、住み心地が格段に向上したと多くの人が実感しています。断熱と気密、そして換気という三本柱の連携が、成功したリフォームにおいては不可欠なのです。
次に、信頼できる業者の選定を慎重に行ったことが、満足度の高い結果を生み出した大きな要因です。事前に複数の業者から見積もりを取り、使用する断熱材の種類や施工方法について詳しく説明を受けた人は、施工中の不安が少なく、仕上がりにも納得している傾向にあります。また、断熱性能の数値的評価を提示してくれる業者を選ぶことで、結果の見える化が可能となり、安心感につながっています。
加えて、補助金制度や自治体の支援策を活用したという点も、満足度向上のポイントです。リフォーム費用の負担を軽減できたことで、性能の高い素材を選ぶことができたという声は少なくありません。さらに、断熱等性能等級を意識し、長期的に価値のある住宅を目指したという共通意識が、満足という結果を導いています。
また、施工後の室内環境の変化を数値で比較した人たちは、その効果を実感しやすい傾向にあります。温度計や電力量モニターなどを活用して、ビフォーアフターの変化を記録することで、断熱リフォームの効果を明確に体感できるのです。
最後に、生活スタイルに合わせて必要な部分だけを段階的に断熱していったという人も、長期的に高い満足感を得ています。すべてを一度にリフォームするのではなく、まずは窓、次に床、最後に天井や壁といったように、住まいと相談しながら進めていく方法は、予算管理がしやすく、失敗のリスクも抑えられる方法として成功者に選ばれています。
断熱リフォームの種類と工法を解説
外張り断熱と内張り断熱の違いと選び方
断熱リフォームを考える際に、まず検討すべきは「外張り断熱」と「内張り断熱」という二つの主要な工法です。これらは、どちらも住まいの熱損失を抑え、快適な室温を保つことを目的としていますが、施工方法や費用、効果、居住中の利便性には明確な違いがあります。適切に選ぶためには、それぞれの特性を深く理解しておく必要があります。
外張り断熱とは、建物の外側から断熱材を覆うように施工する方法で、建物全体を包み込むイメージに近い工法です。建物の外壁や屋根の外側に断熱層を設けることで、構造材そのものを温度変化から守り、熱橋と呼ばれる熱の通り道を極力減らすことができます。この方法の最大のメリットは、室内の壁面積や天井高を変えることなく断熱性能を大幅に高められる点です。また、建物全体の温度ムラを軽減し、冬場の結露やヒートショックのリスクも抑える効果があります。
一方、内張り断熱は建物の内側から断熱材を設置する方法です。居住空間の内壁や天井、床の裏側などに断熱材を張り付けるため、リフォームの工期が比較的短く、費用も外張りに比べて抑えられる傾向にあります。特にマンションなど外壁への施工が制限される物件では、内張り断熱が主流となります。しかし、壁の厚みが増して室内空間が若干狭くなる、コンセントや配管の移設が必要になるなど、生活に影響が出る可能性もあるため注意が必要です。
選び方のポイントとしては、まず住宅の構造と築年数、居住中かどうかを明確にすることが重要です。例えば、住みながら断熱工事を行う場合は、室内の生活空間を確保しやすい内張り断熱の方が現実的です。逆に、外壁や屋根の改修と同時に断熱を行うなら、断熱性能の向上と建物保護を両立できる外張り断熱が適しています。また、地域の気候条件も選定基準の一つです。寒冷地では建物全体を包み込むように断熱する外張りが効果的で、温暖地域では部分的な内張りでも十分なケースがあります。
部位別の断熱工法一覧
まず壁の断熱ですが、内壁か外壁かによって工法が分かれます。外壁の場合は、先述した外張り断熱が多く採用され、建物を丸ごと包み込むような施工が可能です。一方、内壁側からの工事では、断熱材を壁の内側に充填したり、石膏ボードの内側に新たな断熱層を加える内張り工法が行われます。特に既存の外壁を傷つけたくない場合や、外観の変更が制限されるマンションなどでは、内張りが選ばれる傾向があります。
次に屋根や天井の断熱についてですが、これは室内の温熱環境を左右する極めて重要な部位です。夏場は屋根からの輻射熱が室内を暑くし、冬場は暖気が上部から逃げていきます。天井裏にグラスウールやロックウールなどを敷き詰める方法は比較的簡易で、リフォームでも多く採用されています。屋根そのものに断熱材を貼り付ける場合は外張り断熱に分類され、外部の熱を直接遮断するため、高い効果を発揮します。
床下の断熱は、特に冬場に足元から冷気を感じる住宅にとって重要な改善ポイントです。床の裏側に断熱材を取り付ける方法が主流で、施工には床を一度剥がす必要がある場合もあります。築年数の古い住宅では、床下空間が狭く、断熱材を十分に施工できないケースもあるため、事前の現場調査が重要です。また、床暖房との併用を検討することで、さらに快適性を高めることができます。
窓の断熱対策としては、複層ガラスや樹脂サッシへの交換、内窓の設置が一般的です。窓は住宅全体の熱損失の3割以上を占めるとも言われており、断熱性能の向上には欠かせない部分です。特に内窓の設置は工期が短く、費用も抑えられるため、人気のリフォーム手法の一つとなっています。ただし、結露対策や気密性の確保も同時に行うことが求められます。
玄関の断熱では、断熱性能の高い玄関ドアへの交換が最も効果的です。特に古い住宅では、金属製の単板ドアが使われているケースが多く、冷気や熱気の出入り口となってしまいます。最近では、断熱材入りの高性能玄関ドアが普及しており、リフォームでの導入もスムーズです。また、玄関周りに風除室を設けることで、外気の侵入をさらに抑えることができます。
これら各部位の断熱工法は、それぞれの住宅の構造や劣化状況、施工のしやすさによって適正が異なります。最適な方法を選ぶためには、断熱材の種類や施工条件、費用、工期、生活への影響などを多角的に比較検討することが必要です。信頼できる専門業者と相談の上、長期的な視点で計画を立てることが、満足度の高いリフォームにつながります。
DIYでできる断熱対策とその限界
断熱リフォームと聞くと、大掛かりな工事や高額な費用を想像するかもしれません。しかし実際には、専門業者に依頼しなくても、自分でできる断熱対策は多く存在します。特に賃貸住宅に住んでいる場合や、予算の都合で本格的なリフォームが難しい場合には、まずDIYでできる範囲から始めてみるという選択肢も有効です。ただし、DIYには明確な限界があり、それを理解したうえで活用することが求められます。
代表的なDIY断熱としてまず挙げられるのが、窓の断熱対策です。市販されている断熱フィルムやプチプチシートを窓ガラスに貼り付けることで、外気の侵入をある程度抑えることができます。また、厚手のカーテンを設置したり、カーテンボックスを取り付けることでも、窓周辺の冷気対策が可能です。内窓を自作するキットも販売されており、工夫次第では高い断熱効果を得ることができます。
次に、床の冷え対策としては、断熱マットやカーペットの敷設が有効です。床からの冷気を直接遮断することで、足元の冷えを緩和できます。特に子どもや高齢者のいる家庭では、簡易的でもこのような対策は重要な役割を果たします。
また、玄関や浴室など冷気が溜まりやすい箇所には、隙間テープやパネルを使って冷気の侵入を防ぐ方法があります。これらの材料はホームセンターやネット通販で容易に入手でき、手軽に導入できる点が魅力です。
しかし、DIYの断熱対策には限界が存在します。最大の課題は、気密性と断熱性の両立が難しいという点です。プロの施工では、断熱材の継ぎ目や壁体内の結露リスクまでを計算して施工されますが、DIYではそこまでの対応は困難です。さらに、断熱材の種類によっては加工が難しく、安全性の観点からも注意が必要です。
また、DIYでは施工範囲が限定的になるため、家全体の断熱性能を底上げするには力不足となる場合があります。とくに屋根や床下、壁内部の断熱など、構造体に関わる部分についてはDIYでの対応は現実的ではありません。施工ミスによって建材を傷つけたり、逆に結露やカビを発生させてしまうリスクもあるため、無理のない範囲で行うことが重要です。
断熱材の種類と性能
グラスウール・ロックウール・ポリスチレン系の違い
住宅の断熱性能を高めるためには、使用する断熱材の選定が極めて重要です。なかでも、グラスウール、ロックウール、ポリスチレン系といった代表的な断熱材は、それぞれ異なる性質を持ち、用途や目的に応じた適切な選択が求められます。グラスウールはガラス繊維から作られた素材で、安価かつ流通量が多いため一般住宅でも多く使用されています。空気を多く含む繊維構造が熱を伝えにくくし、遮音性もあることから壁・天井・床などの幅広い箇所に対応可能です。ただし吸湿性があるため、施工時には防湿層との併用が不可欠です。
ロックウールは鉱物を原料とする繊維系の断熱材で、グラスウールよりも耐火性に優れています。建築基準法上で防火仕様が必要なエリアや高層マンションなどでは積極的に用いられます。吸音性にも長けており、遮音性能を重視する住宅にも適しています。一方で、コストはやや高めで、加工性はグラスウールに比べて若干劣る場合もあります。
ポリスチレン系の断熱材には、押出法ポリスチレン(XPS)とビーズ法ポリスチレン(EPS)の2種類があります。XPSは圧縮強度が非常に高く、床や基礎部分に適しており、断熱性能も高いのが特長です。EPSはコストパフォーマンスに優れており、天井や壁面など軽荷重の部位に使われることが多いです。どちらも吸湿性が低く、長期間にわたって断熱性能を保てるという利点がありますが、可燃性があるため火災時には注意が必要であり、防火性能を高める処理が施されている製品を選ぶことが望まれます。
ホームセンターで購入できる断熱材とプロ用素材の差
断熱材を購入する際、最も手軽なのがホームセンターで市販されているDIY向けの製品です。グラスウールをはじめとする汎用断熱材は手軽に入手可能で、価格も抑えめです。たとえば厚み50ミリ程度のグラスウールマットは、1平方メートルあたり数百円で販売されており、DIYリフォームの素材として人気があります。ただし、これらは密度が低い製品が多く、熱伝導率も高いため、十分な断熱効果を得るには厚みや施工の工夫が必要です。断熱効果が長続きしにくい点も、DIY断熱材の弱点のひとつです。
一方で、専門業者が使用する断熱材は建築物の省エネ基準を満たす高性能な素材が中心です。密度の高いグラスウールや、発泡ウレタン、真空断熱材など、断熱性はもちろん、耐久性や施工性にも優れた製品が揃っています。これらは通常、施工者の判断と現場条件に基づいて適切に使い分けられ、断熱層を隙間なく確実に形成するための技術と知識が必要です。また、防湿処理や気密処理を含めた総合的な断熱工事が可能であるため、DIYでは難しい高い品質を実現できます。
プロ用断熱材は各種認証制度に対応していることも多く、断熱等性能等級をはじめとする住宅性能評価をクリアする素材であることが多いです。加えて、自治体の補助金制度に対応した製品も多く、長期的に見てコストメリットが大きくなるケースも少なくありません。このように、見た目や価格だけでは分からない品質や施工精度の差が、最終的な断熱性能や居住快適性に直結してきます。
断熱材の性能比較表と耐久性・安全性の観点から選ぶコツ
断熱材の性能を比較するうえでまず見るべきは、熱伝導率という数値です。この数値が小さいほど、熱を伝えにくく断熱性能が高いことを意味します。一般的な16Kグラスウールの熱伝導率は約0.045W/mKですが、32Kなど高密度になると0.038W/mK以下の製品もあります。押出法ポリスチレン(XPS)はおよそ0.028W/mK、硬質ウレタンフォームになると0.024W/mK前後と、発泡系素材は優れた断熱性を誇ります。これにより、薄い断熱層でも高い効果を得ることができ、狭小住宅やリフォーム現場でも有効です。
耐久性に関しても見逃せません。グラスウールやロックウールは繊維構造のために吸湿性があり、防湿対策を怠ると性能が低下する可能性があります。発泡プラスチック系の断熱材は水を吸収しにくく、圧縮にも強いため、長期的に形状や性能を維持するのに適しています。近年では、30年以上にわたって安定した性能を保持できる高耐久製品も登場しており、メンテナンスの手間や再施工のリスクを低減できます。
安全性の観点からは、火災時の延焼リスクや有害ガスの発生有無が重要です。ロックウールや高密度グラスウールは不燃性であり、公共建築物でも多用されます。対してウレタンフォームやXPSなどは可燃性があるため、設置箇所に応じて防火材料との併用が必要です。また、製品によっては難燃処理が施されているものや、国土交通省の不燃材料認定を取得しているものもあり、安全基準に則った製品選定が肝要です。
最終的な断熱材の選び方としては、価格だけでなく、設置環境、耐久年数、リフォームの施工性、断熱等性能等級の取得可否、さらには将来的な住環境の変化も加味して総合的に判断することが求められます。専門業者のアドバイスをもとに、性能とコストのバランスを見極めた断熱材選びが、後悔のない快適な住まいづくりへの第一歩となります。
まとめ
断熱リフォームは、寒さや暑さといった住環境の悩みを根本から解決し、快適な暮らしと省エネ性能の向上を同時に実現できる非常に有効な手段です。特に住宅全体の断熱性能を数値で把握できるUa値や断熱等級などの基準を参考にすれば、より精度の高い判断が可能となり、補助金制度を活用することで費用負担を軽減できる点も大きな魅力です。
施工部位ごとの断熱工法や素材選び、業者選定に至るまでの一連の流れには専門的な知識が必要ですが、事前の断熱診断や相見積もりの取得を通じて、納得のいく選択ができるようになります。例えば、グラスウールやロックウール、ポリスチレン系断熱材の違いや、外張り断熱と内張り断熱の選び方など、性能や費用、耐久性などの観点から比較しておくことが成功の鍵となります。
また、実際に断熱リフォームを経験した方々の口コミや体験談からも分かるように、満足度の高い事例には共通して、事前準備と信頼できる施工業者の存在が不可欠です。一方で、「効果がなかった」といった後悔の声には、見落とされた施工箇所や断熱材の性能不足などが背景にあることも明らかになっています。
自宅の快適性や光熱費削減、結露防止などを本気で改善したいと考えるなら、断熱リフォームはまさに現代の住まいに必要な投資です。費用面や施工の不安がある方も、制度や補助金、専門家のアドバイスを活用すれば、無理なく賢いリフォームが実現できます。放置すれば光熱費は年間数万円単位で損をする可能性があるため、まずは断熱診断から始めるのがおすすめです。
よくある質問
Q. 断熱リフォームによってどれくらい光熱費を削減できますか?
A. 断熱リフォームを実施することで、年間の光熱費を約10%から30%程度削減できるとされています。特に冷暖房効率の低い築年数の古い住宅においては、外気温の影響を大きく受けやすいため、断熱性能の向上が効果的です。たとえば、築30年以上の木造戸建て住宅で断熱材を屋根・壁・床に施工し、窓を複層ガラスに交換したケースでは、年間で約8万円の電気代削減につながったという実績もあります。長期的なランニングコストの観点からも断熱リフォームは有効です。
Q. 断熱リフォームが必要な家の特徴にはどのようなものがありますか?
A. 断熱リフォームが必要とされる住宅は、主に昭和後期以前に建てられた断熱基準のない建物や、室内環境に明らかな不快感がある住宅です。例えば「冬になると室温が10度以下に下がる」「結露が毎朝発生する」「エアコンの効きが悪く部屋ごとの温度差が大きい」などが該当します。築20年以上経過している戸建てや、天井・壁の断熱材が劣化している場合は、住宅の構造調査を実施し、断熱等級やUa値の改善を目指したリフォームが効果的です。
Q. DIYでできる断熱対策と業者施工ではどの程度違いがありますか?
A. DIYでの断熱対策は、断熱カーテンや床マット、隙間テープ、窓への断熱フィルムなど、手軽に取り入れられる反面、住宅全体の断熱性能を大きく改善するには限界があります。一方、専門業者による断熱工事では、天井・壁・床など建物の構造に応じた断熱材の施工が可能となり、断熱等性能等級の向上や公的支援制度の対象になるなど、住宅の資産価値を高める効果もあります。費用はDIYより高額になりますが、効果と耐久性の観点からは長期的に高いメリットを得られる方法です。
会社概要
会社名・・・株式会社ネクストリープ
所在地・・・〒982-0023 宮城県仙台市太白区鹿野3丁目21-20 トリノ長町南 110
電話番号・・・022-281-9450